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ヒロタが綴る日々の出来事

no title

2015.12/28

divide and it multiplies
when divided it appears
the distance is blessed

-Rei Naito

さて、聖人の生誕を祝う日も、そのまえもそのあとも、日常をすごしている。現在のスタンスはまたもや別の方向へ。むかしこの手で何かをつくると決めた日から、そのときそのとき、今の自分に必要であろうと思う方向へと揺れながらここまで来た。揺れることへの罪悪感、どちらか一方向だけに進まなければならないのではないかという長い問いかけ。それは時間を経て和解し、原石のようなものだけが残り、今は自覚的にその方向へと自ら進む。16年目の原石。

2月までの予定は少し延び、3月まで、たくさんたくさんつくる日々が続くだろう。それは明らかな観客、購入してくれる人たちに向けたものだ。その中にも、ちらりちらりと、微かに、今の気分がにじみ出ているように思われる。そして、できあがったものを、わたしは好きだと思う。そして伝えられたらと思う。

いつも、切実さのもとにつくっている。ひとりでいるとき、工房から出ずに籠っているとき、何かは現れる。何かとは何か?

完璧さ

2015.12/21

「自分にとって完璧に欲しいもの」が欲しい。
手に入れられなかったり、手に入れられたとしても、本当に望むものと違うかたちなのなら、いらない。という極端な気持ち。
先日の、欲しかったニットキャップを選びに選び、また出会って、ようやく買ったという件からはじまり、ここの所「心からいいなあと感じて欲しいと思ったもの」のことを考えていて、自分はそうなんだろうなあ、と思った。

まあ、時々は妥協するのである。それでも。
主に経済的な理由なのだけど、とはいえ予算内で選びに選んで買うのだ。
でも、あとでやっぱり「これなら無い方が良かったかも」となる事が多い。まず、気分が高まらない。
そういうのは、”もの”に対しても自分に対してもあまりしあわせではないような気がする。

妥協するくらいならないほうがいいや。という方針は、私はなるべく貫いた方がいいかもしれない。

完璧なものを求めてしまうのは、時に頑固で窮屈にも感じ、端から見ている人にもそう感じられるだろうけど、この「完璧なもの」を求めていく姿勢こそが、自分がものづくりを続けていける肝なんじゃないかと思う事もある。
宮崎駿監督「風立ちぬ」の主人公のように、つくりたいもののイメージはあって、でも技術とか環境とかで今つくる事が出来ないんだけど、でも未来はきっとそこにに辿り着くんだー!みたいな気持ち。またはある人の言葉を借りれば、バタアシ金魚のラスト近くに主人公が見る「ある光景」。それは、本人にとってのパーフェクトなものなのだと思う。

一生かかっても、完璧なものが手に入るとは思っていない。
これだけ偉そうに語っていても、時折ゆるふわなアイテムが生まれたりもする。そういうのを楽しみつつ、でも、求め続けるというのが肝なのだ。

no title

2015.12/15

昨晩は、近頃仲良くさせてもらいつつある古書店&喫茶店のバーベキューにお呼ばれした。自分よりも年上の方々が多く集まり(しかも皆さん超絶に紳士的)、年齢の重ね方の様々な可能性を見たような気がした。
人との集まりでは普段食べないようになった食べ物が並ぶので、翌日は夜までお腹が食休みになるのだけど、それでも、楽しくわいわいするのはきらいではない。

今日は阪急百貨店での個展のレイアウトと作品リストづくり。
展示イメージも固まってきた。

昨日買ったアルパカのニットキャップが好きすぎてたまらない。
洋服、身につけるもの、お洒落は大好きだ。
でも、この生き方を選んでいるので、多くの人がしているより遥かに遥かに、「お洒落するもの」を買う事は少ない。たぶん、皆が想像できないくらいだと思う。

そのぶん、「こういうアイテムが欲しいな」と思い、それをお店で見つけて試着して気に入り、買ったときの喜びはとても大きい。と、いうか、めったに買えないから、すごく気に入ったものしか買わなくなった。
で、何年も大切に着る。
接客の感じもとてもよくて、しかも、メインで対応してくれたひとは超絶美人だった(!!)。
古い建物を活かしてショップに仕立てた内装も素敵だったし、また足を運びたいな、と思う。

アルパカニットキャップ、本当にふかふか。とてもいい仕事。
会った人には触らせてあげよう。

「奈良美智の日々」10月27日のテキストは、妙に心にくる。
まったく同じではないにせよ、なんとなく感じていながらもうまく言葉にできないことを、言葉にして読む事が出来る。
(ちがうところがあるとすれば、私には自己顕示欲がある、ということ)
私はつくる人なので、羊毛は割と使いこなせるが言葉はそうもいかない。テンポの速い会話なんていうのは特にそうだ。誰かに話した事があったかここに書いた事があったかどうかは忘れたが、二十代の頃、一時期言葉を失った事がある。そのことをすっかり忘れていたくらいではあるが、できれば口をつぐんで話したくなく、行動や、やっていること、つくるものをみてほしいというのが本音だったりする…けど、こうやって他人に何かを求める事自体、私もまだまだだなあと思う。

思えば大学の頃から、奈良さんの本を、というかNARA NOTEを繰り返し読んできた。
今ひとたび、何をどうつくり、外へ出していくのか?ということを自分に問い直しながら、日々の作業や制作に向かっていく時期なのだろう。

京都帰り

2015.12/13

MARNIで大きく真っ黒な羊のオブジェを見た。
背中にはMARNIのストールだかマフラーが色違いで2枚掛けてあり、ニットキャップが被されていた。大きなものはいい。

マーコートでニットキャップを買う。
ずっと欲しかった新しいニットキャップは、アルパカ100%でとても肌触りがいい。肌に触れる部分もチクチクしないのがうれしくて、形と編み込みも気に入った。コートはなかったけれど、これが見つかって良かった。(ちょっとしたコートが買えそうなニットキャップである)

何年も気にし続けていた鳴門屋の鯛焼きを、帰りにようやく買った。金時芋と餡子をひとつずつ。熱々のうちに金時芋を三条のベンチで食べる。餡子のは帰りの電車の中で。

京都の交差点で大学の友人に偶然出くわした。少し立ち話して、いつも偶然会うねと言われる。そういえば、彼とは以前電車の中で偶然にも出会ったのだった。恒例の忘年会に誘ってくれたが、皆の事は時々思い出すし好きだけど、人見知りなので、と丁重に断る。そういえばそうだったねえ、と。でも、誘ってもらえるのはいつだって嬉しい。

kocka冬のおくりもの展
明日、12/5から始まります。
バッグやマフラー、そして動物や植物のブローチをいろいろとお届けしています。今回は会期途中に追加納品を予定していますが、毎回いろんな意匠のものをお届けし、またひとつひとつ表情もかわるため、気になるブローチがありましたら早めのお越しがおすすめです(店主さんによると、まず初日の土日が人手が多いそうです)。また、洋梨コースターと焼き菓子、グラノーラの冬のギフトセットも店頭でいくつか販売用にあるそうなので、こちらもぜひお手に取ってみてくださいね。

先日kockaさんにご挨拶と納品に伺いました。
明治末期に別荘地として開発された、大阪堺市・諏訪森にある古いお屋敷を改装してできた複合施設「遊」。この中にkockaさんはあります。他にも喫茶店、カフェ、洋服屋さん、雑貨店などありますので、冬のお出かけコースに入れて頂けたら嬉しいです。

kockaさんはお店を始める前、10年くらい前から私という作り手の事を知ってくださっていたそうです。その事を聞き、驚きとともに、続けてきて良かったと心から思いました。伝説の雑貨店、サジと一緒にいろんな展示をしたbluebeansにも行かれた事があるそうです。今年2月に京都文化博物館で参加したひつじマルシェの事、百貨店の催事での出品の事など、いろいろと気にかけてくださっていて、本当にありがたい気持ちでいっぱいです。これからもこつこつと、続けていこうと気持ちを新たにしました。

kockaさんで鉄木のお箸をお土産に買って帰宅。実は、ずっと自分用のお箸を買っていなかったので、こちらもいい出会いでした。大切に使おう。

黙々と作業している時というのは、案外いろんな事を考える。
特にローリングをしている時は50回、100回とゴロゴロ往復させているだけでもあるので、いってみれば単純作業で、ついいろんなことをとりとめもなく考える。大抵はしょうもない事だ。ローリング回数を数えながら別の事を考えているなんて、意外と器用なものである。

先日大山崎山荘美術館に行って、そういえばここを教えてくれ、案内もしてくれた人と随分会っていないし連絡も取っていないなあなんて事を思っていた。もう8年くらいになるだろうか。
美術の事、アートは作家のためではなく人のためにあるのだという事、内藤礼さんを「好きだと思うよ」と教えてくれた事、とりとめもないお話につき合ってもらってよくお茶した事、活動初期の頃はMacもろくに扱えずもちろん持ってもいなくて、よく展覧会のハガキのデータを作ってもらってMOディスク(そんな時代だった!)に入れてもらっていた事、猪熊源一郎現代美術館に行って須田悦弘展を観た事、1度目に大阪に住んでいて、もう引っ越さないとならない状況になった時に半泣きで電話して話を聞いてもらった事、などなど、小っ恥ずかしい部分も含めて随分とお世話になった方だったのに、今の今まですっかり忘れてしまっていたのだ。なんという。
そして、大山崎には何を観に連れて行ってもらったのかがどうしても思い出せない。中の喫茶店のテラス席で、当時私が来ていた服の質感に関心があったのだけは妙に覚えているのだが。
ともあれ、いろんな事を教えてもらい、私が影響を受けた人の一人には必ず入る方だと思う。(そういえばハチクロ全巻を返してもらっていない、という事まで思い出した。)

別に何かがあったわけではないし、喧嘩をしたわけでもない。理由はなく、でも何となく会わなくなって連絡も取らなくなり、気づけば8年である。
そんな訳でちょっと気になって、ひとまずパソコンにメールを出してみた。久しぶりに大山崎山荘美術館に行き、それきっかけで思い出したこと、お元気ですか私は元気ですというような内容の短い文章(携帯にメールをつけないという方だった)。思い当たるメールアドレスはどれもつながらずに返ってきてしまった。
あとは電話をかけるという方法しかないのだが、久しぶりすぎて電話するのも気が引けるし、番号も変わっているかもしれないし、何より今はつくらなければならないものがたくさんあって、そうだ、ここに日誌を書いている場合ではない。つながったとして、話に花を咲かせる余裕もないだろう。

そんなこんなで、せめて忘れないようにと真夜中にキーを打っている。
人との縁は変なものだ。とても仲が良かった人とすっかり会わなくなったり、もう連絡先さえ分からなくなった人もいる。でも確かに昔、よく過ごした時期というのはあったのだ。
いやもしかして、仲が良かったと思っているのは私だけかも…

雨の上がった翌日。気持ちのいい午前中に、マフラーのワークショップを行いました。

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さて、まずは180cmある大きなシルクシフォン生地に向かいます。水玉をつくりたい場所に、お好きに円を描きます。

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シルクシフォンの上に、薄く羊毛を並べ、石けん水をかけながらプチプチと一緒に巻いていきます。
薄く均等に羊毛を取るのが、なかなかむずかしい。一度に取る羊毛には個人差もあります。皆さん上手に、そしてひたすらコツコツと、並べていきます。

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手前の方はローリングの最中。
大きな海苔巻きになったプチプチを、ゴロゴロと転がします。
圧力を徐々に変えつつ、マフラー4辺、巻く方向も変えながら200回×4回のゴロゴロ!

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サイズになるまで縮めたら、石けん水を洗い流して形を整えます。
渋めの大人っぽいグリーンに、ほわんとした優しい形の水玉模様がかわいい。
裏側のシフォン生地が見えている面も綺麗です。

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明るいからし色も、冬のコーディネートのアクセントになってとても素敵ですね。布フェルトが初めてとは思えない仕上がりでした。またもやヒロタ、作家の危機です。

参加下さった皆さま、ありがとうございます!そして、おつかれさまでした!
もとの布サイズが大きくて大変だったと思いますが、コツコツとそしてゴロゴロと、大忙しなワークショップの中、素敵なマフラーが仕上がりました。
薄くて軽くてあたたかい、メリノウールとシルクのマフラー。これからの寒い季節に役立てて頂けましたら幸いです。

あまり意識していなかったのですが、わたしは「速く、無駄なく、美しく」を作業のモットーに取り入れたいなあと思って、いろいろ工夫しています。(出来ているか出来ていないかはまた別のお話として・・・)
フェルトメイキングの専門書にはかなり細かい指示があるものもあります。ものづくりを続けていく中で、自分はやらないこと・やること、が自然と出来てきて、要らないと思う所はさっくり端折ったりもします。今回あらためて、そうやって自分なりの方法でやっているんだなあ、と気づかされました。
こういう気づきに出会えたのも、こうしてワークショップをさせてもらって、いろんな方とお話が出来るからですね。
本当に自分は、フェルトを通じて多くの方達とコミュニケーションを取っているのだなあ。
月並みですが、人や羊毛に感謝の気持ちで一杯です。
みなさま、本当にありがとうございます。そして羊、いつもありがとう。。。

※ワークショップは不定期で開催しています。
頻繁にやる時期があったり全然やらなかったり、いろいろで申し訳ないのですが、ホームページやSNS等で告知いたします。また機会がありましたらご参加いただけるとさいわいです。

かたちのであい 
ルーシー・リー、ハンス・コパーと英国陶磁

ぽかぽかと暖かく、木漏れ日から差し込む日差しも穏やかなある日、美術館へ行ってきました。

ハンス・コパーの作品は多分初めて観たと思います。
とっても面白い、彫刻のような陶器。エッジが利いていて、確かな技術を伺わせる素晴らしい作品でした。色合いも男性的。メインビジュアルの砂時計や瓢箪に似た緩やかな曲線の花器も好きでした。が、全体的にはシャープな印象。薄く複雑な造形のものも多く、とにかくかっこよかった。(ご本人のアー写も格好良すぎました)
ルーシー・リーの陶器は、ハンス・コパーと比較するとやっぱり女性らしさにあふれています。ランプシェードをひっくり返したような、あのルーシー・リー独特のフォルムの器はもちろん素敵で、メインビジュアルにもなっている青い色も美しかったのですが、わたしはいくつかあった花器がとってもいいなあと思いました。花器の一番上の部分がラッパのように広がっていて、その淵に別の色が入っていたり、ゆるりと歪ませていたり。すとんとしたグレーの花器で、全体に斜めの溝をざっくり入れてあるのも好きだったな。観て美しいだけではなく、「この花器だったら赤い実の枝ものが合うなあ」とか、「白いオールドローズをばさっと投げ入れしたらいい感じになりそう」など、実用として想像の余地もあります。
どちらがよくてわるいということではなく、ここがふたりの大きな違いでした。
キャプションを読んでいくと、やっぱりハンス・コパーはルーシー・リーと出会う前は彫刻からスタートし、出会ってからふたりで共同制作をし、時の流れを経て、やっぱり彫刻が好き、という流れになっていった方のようです。

美術館のタイトルデザイン(フォントやその配置など)もすごく好みでした。展示室に入ると、麻っぽい布張りの壁面に、たしかタイトルが白のフォントで貼られていました。斜めに貼られた英語の筆記体フォントはブルー。

大山崎山荘美術館の展示は、全体にシャープな展示デザインのときに伺う事が多いです。大好きな内藤礼さんとか。

美術館にたどり着くまでの長く急な坂道、行き道に立っている、新しくはないけれど綺麗に手入れされた家々の玄関先(じろじろ見ては、いませんよ)、たくさんの木々や植物、銀杏の独特な匂い。今までは夏と冬にしか伺った事がなかったので、秋になるとこんな空気なんだ、と新鮮でした。

皆、生きているといろんなことがあります。気持ちはいつも晴れているわけではなく、喜んだり失望したり、悲しかったり楽しかったり、単純に忙しかったり、いろいろ。
それは私以外の人皆にあることで、特別なこととは思いません。そして、この素晴らしい陶器をつくっているルーシー・リーとハンス・コパーもきっと同じだと思います。
きれいなだけではない、正しいだけではない混沌とした心や人生、世界の中から、美しいものをこの世に出すという行為とその力、というものを見た気がしました。

常設展示の中に、フランソワ・グザヴィエの「新しい羊」という彫刻作品が外にいて、それを観るのも楽しみです。遠い所にあって、近くでは観られなくて、景観と一体になっているのが、あの羊たちのいい所なんだろうな。

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10月25日(日)、布フェルトのマフラーワークショップの講師をさせていただきました。
8HATIのブログにスタッフさんがレポートを載せてくださっています。ぜひご覧ください。

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完成したマフラーの一部を撮らせていただきました。

今回ご参加の皆さんは、フェルトメイキング自体まったく初めてとのことでしたが、これは・・・売れます。(個人的には作家の危機です。)

参加者さまのアイデアで、水玉部分をハートにしたものが8HATIのブログに掲載されています。
こんなふうに、できそうな範囲であればアレンジも可能なので、追加講習に参加の方も気軽にお訊ねくださいね。

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今回のテキスト。
おなじみの手書きローテクテキストです。

とても大きなサイズから縮めて布に仕立てるので本当に大変な作業だったと思いますが、皆さんの「いいマフラー作るぞ〜」という和やかで静かな気合いが伝わってきました。至らぬところもあったかとは思いますが、機会がありましたらまた、フェルトに触れて頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました。そしておつかれさまです!ふたたびお会いできる日を楽しみに。

ということで、同じメニューで追加講習の参加者さまを募集中です。
まだ空きがございますので、ご興味のある方はぜひご参加ください!

※11/10(Tue) 布フェルトマフラーワークショップ追加講習

そして最後に、フクダロングライフデザイン&8HATIのみなさま、carbonオーナー、SNS等で告知にご協力くださったみなさま、いつも本当にありがとうございます!