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ヒロタが綴る日々の出来事

きれいなものを

2015.11/5


かたちのであい 
ルーシー・リー、ハンス・コパーと英国陶磁

ぽかぽかと暖かく、木漏れ日から差し込む日差しも穏やかなある日、美術館へ行ってきました。

ハンス・コパーの作品は多分初めて観たと思います。
とっても面白い、彫刻のような陶器。エッジが利いていて、確かな技術を伺わせる素晴らしい作品でした。色合いも男性的。メインビジュアルの砂時計や瓢箪に似た緩やかな曲線の花器も好きでした。が、全体的にはシャープな印象。薄く複雑な造形のものも多く、とにかくかっこよかった。(ご本人のアー写も格好良すぎました)
ルーシー・リーの陶器は、ハンス・コパーと比較するとやっぱり女性らしさにあふれています。ランプシェードをひっくり返したような、あのルーシー・リー独特のフォルムの器はもちろん素敵で、メインビジュアルにもなっている青い色も美しかったのですが、わたしはいくつかあった花器がとってもいいなあと思いました。花器の一番上の部分がラッパのように広がっていて、その淵に別の色が入っていたり、ゆるりと歪ませていたり。すとんとしたグレーの花器で、全体に斜めの溝をざっくり入れてあるのも好きだったな。観て美しいだけではなく、「この花器だったら赤い実の枝ものが合うなあ」とか、「白いオールドローズをばさっと投げ入れしたらいい感じになりそう」など、実用として想像の余地もあります。
どちらがよくてわるいということではなく、ここがふたりの大きな違いでした。
キャプションを読んでいくと、やっぱりハンス・コパーはルーシー・リーと出会う前は彫刻からスタートし、出会ってからふたりで共同制作をし、時の流れを経て、やっぱり彫刻が好き、という流れになっていった方のようです。

美術館のタイトルデザイン(フォントやその配置など)もすごく好みでした。展示室に入ると、麻っぽい布張りの壁面に、たしかタイトルが白のフォントで貼られていました。斜めに貼られた英語の筆記体フォントはブルー。

大山崎山荘美術館の展示は、全体にシャープな展示デザインのときに伺う事が多いです。大好きな内藤礼さんとか。

美術館にたどり着くまでの長く急な坂道、行き道に立っている、新しくはないけれど綺麗に手入れされた家々の玄関先(じろじろ見ては、いませんよ)、たくさんの木々や植物、銀杏の独特な匂い。今までは夏と冬にしか伺った事がなかったので、秋になるとこんな空気なんだ、と新鮮でした。


皆、生きているといろんなことがあります。気持ちはいつも晴れているわけではなく、喜んだり失望したり、悲しかったり楽しかったり、単純に忙しかったり、いろいろ。
それは私以外の人皆にあることで、特別なこととは思いません。そして、この素晴らしい陶器をつくっているルーシー・リーとハンス・コパーもきっと同じだと思います。
きれいなだけではない、正しいだけではない混沌とした心や人生、世界の中から、美しいものをこの世に出すという行為とその力、というものを見た気がしました。

常設展示の中に、フランソワ・グザヴィエの「新しい羊」という彫刻作品が外にいて、それを観るのも楽しみです。遠い所にあって、近くでは観られなくて、景観と一体になっているのが、あの羊たちのいい所なんだろうな。